『田園の詩』NO.43 「姿を見せぬ鳥」 (1996.4.9)


 市街地でも、野鳥観察のために餌台を作ってミカンなどを置くと、一番先にやって
来るのがヒヨドリかメジロだそうです。この鳥たちは、一年中いるものの、特に冬に
なると、北の地方や山奥から里や市街地などの暖地に多く移動してきます。


     
     ミカンを枝に刺しておくとメジロがすぐにやって来ます。ヒヨドリはメジロを
     追っ払って横取りします。ヒヨドリがいなくなると、近くに隠れていたメジロが
     また出てきます。その繰り返しです。ミカンには他の鳥は来ないようです。      
                                  (08.1.24写)


  いつも目に付くこのヒヨドリとメジロ、この冬には、市街地では全くといって良い
ほど見かけなかったそうです。こんなことは珍しく、『姿を見せない、ヒヨドリ・メジ
ロ』という見出しで新聞の記事にまでなりました。それによると、「山奥に餌が充分
有るので街まで降りて来ないのではないか」と書かれていました。実は、街から遠く
離れた山奥の我が家の付近でも、今年はやはり見かけませんでした。

 当地、国東地方は山野にナンテンが自生しています。『難を転じる』という縁起を担
いで、庭にも好んで植えられています。そして、正月には、赤い実が立派に付いた姿
の良いものを選んで切り取り、家の中に飾ります。

 このナンテン探し、立派なものを取るのに毎年苦労するのです。赤い実がどれもこ
れもヒヨドリに食べられて半分位になっているからです。今年は全部完全なままで、
かえって目移りがする位でした。しかも、お彼岸が過ぎた現在でも、まだしっかりと赤
い実が付いています。

 ところで、農家の人達にとって、ヒヨドリのいないことは歓迎すべきことのようです。
「畑のキャベツがつつかれずに済んだ」「今年は、ハウスに入り込んでイチゴを荒ら
されなかった」等々、いつもヒヨドリの被害に手を焼いているらしく、喜びの声が聞か
れました。ヒヨドリは、野菜や果物を食べて悪さをする嫌われ者なのです。

 反対に、メジロは姿も奇麗で鳴き声も良いので、愛され親しまれています。ちなみに、
大分県の県鳥でもあります。

 それにしても、ヒヨドリやメジロのいないのは不思議なことです。全国的なことなの
でしょうか。厳冬だったので、ずっと南の国まで行ってしまってるのでしょうか。
                               (住職・筆工)

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